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CMタレントの不祥事に対する企業対応の分析

企業はコマーシャルのために特定の著名人と契約していることが多い。誰を企業の顔、商品の顔とするかによって、売れ行きは何倍も何十倍も変わるものだ。
しかし著名人が不祥事を起こすと、その影響力はマイナスに転じる。対応策を何も取らなければ、著名人本人のみならず企業もが世間から批判の目で見られ、株価は下落し、商品の売れ行きも鈍化する。緊急の会議や取引先への説明対応に追われて通常業務が滞ることもある。

タイガーウッズやベッキーの不倫騒動などが記憶に新しい。
jp.reuters.com

 

このような状況下での企業の適切な対応を判断するために行われた調査研究がある。*1

1988~2016(29年間)のアメリカにおいて、上場企業と契約している著名人に不祥事が生じたケースは128件、関わった企業は230社。これらの不祥事において企業が実際に取った対応と、その後の企業業績等への影響との関係性を分析したものである。*2

 

この研究によれば、著名人を守り支援しようが契約を打ち切ろうが、不祥事報道後3日以内に対応した企業はパフォーマンスを向上させたと記されている。単に危機を乗り切ったというだけの話ではなく、平均2.1%の株価上昇に繋がったそうだ。*3
因果関係については疑問点も残るが、意思決定の「中身」よりもプロセスの「スピード」が何よりも大事であり、早急に対応する「態度」を消費者は見ているということであろう。これは通常の人間関係にも近しいところがあり、社会は人間によって作られているということを改めて感じざるを得ない。

ちなみに、著名人の属性と、商品との関連性によっても企業側の対応は変わるという。タイガー・ウッズの例で言えば、ナイキをはじめとするゴルフに関わる企業はウッズに味方し、スポーツ産業以外の企業はウッズと縁を切るといった違いだ。業界をけん引してきた選手に対して敬意を払うということであろうか。

 

いずれにしても、情報の透明性が高まる世の中であるからこそ、不祥事に対する迅速な対応力が企業にも個人にも求められているということである。


余談になるが、資金調達でも先の研究結果に近い現象が見受けられる。

MITメディアラボの伊藤氏らが、Jeffrey Epstein氏から巨額の寄付金を受け取っていたにもかかわらず、匿名寄付としたり書面から氏名を消すなどJeffrey氏の存在を隠していた…という事件が数日前にニュースになったが、ここでも、寄付を受け取っていたこと自体より諸々の情報を隠していたことに対するマイナス評価が強く表れているように感じられる。

jp.techcrunch.com

 

 

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出典:
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
2019年10月号「企業の顔がスキャンダルにまみれた時」

Harvard Business Review

*1:"Managing Negative Celebrity Endorser Publicity : How Announcements of Firm (Non) Responses Affect Stock Returns" by Stefan J. Hock and Sascha Raithel

*2:事件の半数が2010年から2016年の間に起きているとのこと。リーマン・ショックを受けてメディアが力を持ち始めたのか、それとも…

*3:不祥事から4週間後のデータ